こんにちは。整体サロンpirka-ピリカ-の山田です。
距腿関節は、立位・歩行・ランニングといった基本動作を成立させるうえで中心的な役割を担う関節です。
臨床でも足関節捻挫などと関係が深く、体全体のバランスを決めている関節と言っても過言ではないほど重要な関節の一つです。
そのため、距腿関節の構造理解と関節運動の知識は、整体師・理学療法士・柔道整復師・鍼灸師・トレーナーなど身体に関わる専門家にとって必須の基礎知識なのです。
この記事では、距腿関節の解剖構造、関節運動、臨床への応用について解説していきます。
整体師、柔道整復師、理学療法士、鍼灸師、セラピスト、トレーナーといった身体についての専門職の方々の臨床への一助になれば幸いです。
目次
距腿関節の構造
距腿関節は所謂「足首の関節」のことを指します。下腿部を構成する脛骨・腓骨の下端と距骨がこの関節を構成しています。
では、まずは距腿関節の基本的な構造を理解していきましょう。
距腿関節の構造
改めてですが、距腿関節は脛骨遠位端(内顆・外顆・脛骨天蓋)と腓骨遠位端が形成する「モルタル(くさび)」構造に対し、距骨滑車がはまり込むヒンジ型の関節です。
◆距骨滑車の形状と安定性
距骨の上部である距骨滑車は前方が広く、後方が細い「台形状」をしています。背屈位では広い前方部が脛腓間にしっかりはまり込み、関節安定性が高まります。
逆に底屈位では細い後方部がはまり込むため、関節の遊びが増え、細かい運動が可能になるメリットと捻挫のリスクが高まるデメリットが発生します。
この理由によって、捻挫をする時は「つま先が伸びた位置(底屈位)」で大半が起こります。[/box]
◆脛腓関節の役割
脛骨と腓骨は単に距骨を挟むだけでなく、背屈時にわずかに開くことで距骨前方の広い部分を受け入れています。
この微小運動は、前脛腓靭帯・後脛腓靭帯・前脛腓靭帯の強度に依存している為、これらの損傷が起こると距腿関節の不安定性や可動域制限を引き起こします。
◆靭帯構造
距腿関節の安定性は以下の靭帯によって保持されています。
①外側靭帯
・前距腓靭帯(ATFL)
・踵腓靭帯(CFL)
・後距腓靭帯(PTFL)
※この3つのうち、特に前距腓靭帯は底屈位で最も緊張し、捻挫時に最も損傷されやすいことが分かっています。
②内側靭帯
内側に存在する「三角靭帯」は非常に強固で外反捻挫が内反捻挫に比べて、圧倒的に少ない理由のひとつでもあります。
◆関節包・腱構造
距腿関節の関節包は前方で薄く、後方で厚く補強されています。
さらに、前方には前脛骨筋腱、後方にはアキレス腱が走行し、これらの腱は足関節の動的安定性を補助する役割を持っています。

距腿関節の関節運動(背屈・底屈と伴う微細運動)
距腿関節の主たる運動は背屈と底屈です。
しかし、あなたの関わる臨床で活用する為に、単純な一軸運動ではなく、距骨の立体的な回旋運動を伴う三次元運動として理解していきましょう。
(1)背屈のメカニズム
背屈は以下の骨運動を伴います。
・わずかな内旋
・脛腓関節のわずかな開大
・距骨の後方への転がり
背屈時に距骨前方の広い部分が脛腓関節を押し広げることで、安定性が強まる構造を呈しています。
背屈制限(特に距骨前方滑り制限)は、膝関節代償や足部回内の代償を助長してスポーツ障害の原因になりやすいです。
(2)底屈のメカニズム
底屈は以下の骨運動を伴います。
わずかな外旋
脛腓関節が閉じる方向へ働く
距骨の後方部は前方部より幅が狭いので、底屈時には関節安定性が低下し、可動域が大きくなります。
その為、底屈位では、前距腓靭帯などの支持組織に大きなストレスがかかるため捻挫リスクが上昇するのです。
(3)底屈・背屈以外の微小運動
他の関節運動には下記のような動きが報告されています。
回旋運動(あまり大きくは動かない)
わずかな側方すべり
これらの微細運動は肉眼ではわかりづらいですが、関節モビライゼーションなどの徒手療法などで重要な要素の為、しっかりと覚えておきましょう。
距腿関節の臨床での重要性
距腿関節は体の中でも下部の関節であるので、歩行・ランニング・ジャンプなどのCKC(クローズドキネティック チェーン)において最も重要な関節です。
臨床でよく見られる症例で距腿関節へのアプローチを推奨する例をいくつかご紹介します。
(1)背屈制限と膝関節障害
距腿関節の背屈可動域低下があると膝の外反モーメント増大に繋がります。その為、ACL損傷やジャンパーズニーなどの膝の怪我リスクを高めてしまいます。
メカニズムとしては距腿関節背屈制限→足部回外or過回内→膝外反→膝障害
であり、スポーツを行なっている人に多く見られるので、該当する場合は必ずチェックするようにしましょう。
(2)底屈優位は足部捻挫を助長
前距腓靭帯の過緊張や底屈位による足関節の不安定性は、スポーツ中の内反捻挫を誘発しやすいです。
捻挫後の距骨前方偏位は関節の安定性を損なうので可動域低下・疼痛・再発リスクの増大にも繋がります。
(3)足部の非対称性と体幹機能の低下
底屈・背屈の可動域の左右差は、股関節伸展や体幹の安定性に影響することが示唆されています。
例えば、「足関節不安定症→体幹筋の反応速度低下」などが挙げられます。
まとめ
距腿関節の構造は単純なヒンジ構造のようでいて、実は立体的な形状と靭帯・筋による高度な安定システムと運動性を両立しています。
背屈制限や底屈偏位は、足部だけの問題にとどまらず膝・股関節・体幹にまで影響が及ぶので、臨床ではアプローチの汎用性が高い部位になります。
距骨の滑りや背屈可動域の評価が、臨床で最も取り入れやすいかと思いますので、今まで距腿関節に目を向けた事がない場合は、そこから始めてみてください。
この記事が身体についての専門職の方々の臨床への一助になれば幸いです。









