こんにちは。整体サロンpirka-ピリカ-の山田です。
医療現場や臨床で働いている人は、痛みがある患者さんが毎日のように来院されますよね。
患者さんに症状の説明や施術の説明をする時に血流の話をすることも多いと思います。
「血流が悪いから痛みが出やすくなっていますね」
「血流を良くして痛みを改善していきます」
しかし、そもそも筋骨格系関連の疼痛は血流が良くなると痛みが緩和するのはなぜなのでしょうか?
実際のところ、血流改善による鎮痛効果には筋・神経・免疫・代謝・脳機能が同時に関わる複雑なメカニズムが存在します。
今回は、血流と疼痛抑制の関係を科学的に、かつ現場で役立つレベルで説明していきたいと思います。
整体師、柔道整復師、理学療法士、鍼灸師、セラピスト、トレーナーといった身体についての専門職の方々の臨床への一助になれば幸いです。
目次
血流が良くなると痛みが和らぐ科学的な理由
まずは血流が良くなると痛みが和らぐ科学的な理由をまとめていきましょう。
漠然とでも疼痛抑制・疼痛改善の要因や原因を理解しておくと、様々な方法やアプローチで疼痛緩和が可能になる事が分かるようになります。
ではさっそく、血流改善によって痛みが緩和する科学的なメカニズムを5つ書いていきます。
①酸素供給の増加による末梢神経の過敏化抑制
多くの慢性痛の背景には、筋・筋膜・腱などの局所に起こる低酸素状態とpH低下が関与していることが分かっています。
低酸素状態では炎症物質であるブラジキニンやサブスタンスP、プロスタグランジン、炎症性サイトカインなどが過剰に産生されることが分かっています。
これらは、痛みを伝えるC線維を過敏化させてしまい、軽い刺激でも痛みが増える、侵害受容過敏やアロディニアという状態を引き起こします。
しかし血流が改善し酸素が組織に十分に行き渡ると、pHが正常化し痛みを感じる化学感受性受容体の興奮が減るとともに、ブラジキニンなどの発痛物質も減少することで、末梢神経の閾値が上がり痛みが減少します。
②老廃物(代謝産物)の除去によって痛み物質が減る
痛みがある部位を温めたり、軽く動かしたりした直後に「スッと軽くなる」理由の一つが老廃物(代謝産物)の排出です。
筋疲労や局所虚血で蓄積する発痛物質としては
・乳酸
・水素イオン
・炎症性サイトカイン
などが挙げられます。
これらが血流が低下し局所に過剰に溜まる事で、筋紡錘・自由神経終末を刺激して痛みを悪化させます。
血流が改善すると、上記したような痛みの原因物質が排出・拡散されて、化学受容器の興奮が低下し痛みが減少します。
③温熱効果による疼痛抑制
血流が良くなると筋温や局所の温度が上がります。(血液の熱分配作用)
この温熱効果が痛みを和らげるメカニズムは複合的だと言われていますが、主に次の2つにまとめられます。
1、末梢受容器の活動抑制(閾値上昇)
温度上昇により神経伝導速度が変化します。
熱刺激は触圧覚(Aβ線維)を優位にし、ゲートコントロール理論(GateControlTheory)の通り、脊髄後角で痛覚伝達が抑制されます。この作用により痛覚受容器の興奮性が低下し痛みが改善します。
2、筋緊張の低下
血流増加で筋温が1℃上がるだけでも様々な効果があります。
・筋の粘弾性低下
・筋血流量増加
これらの効果によって筋のトリガーポイントや硬結が緩和されます。
血流増加→局所温熱→筋緊張低下→疼痛抑制という「正のループ」が形成されるのです。
④微小循環の改善による組織修復の促進
筋骨格系疼痛においては「毛細血管レベルの微小循環」も疼痛に関わります。
毛細血管数の増加(Capillarization)は筋の酸素供給効率を高め、修復速度を大きく向上させます。
損傷組織の修復には十分な血流が必須であり、微小循環が不足すると線維化しやすいと言われています。
その為、血流が悪い状態(毛細血管の減少)は慢性痛に関連していることが示唆されているのです。
血流が改善されると微小循環が促進されて傷付いている組織が修復されていくことで痛みが緩和されます。
⑤中枢性疼痛抑制による疼痛緩和
血流改善は末梢だけの話ではありません。
運動や温熱、機械的刺激によって生じる血流増加は、中枢(脳・脊髄)にも鎮痛作用を生みます。
・内因性オピオイド(エンドルフィンなど)の増加
・下行性疼痛抑制系の活性化
・セロトニン・ノルアドレナリン増加
特に、軽度〜中等度の有酸素運動で起こる運動誘発性鎮痛(ExerciseInducedHypoalgesia(EIH))は、
血流改善・自律神経調整・神経化学物質の変化が複合的に作用して発生します。
運動療法などで血流が改善すると、この運動誘発性鎮痛の作用が起こり疼痛を改善します。

まとめ
どうでしたでしょうか?
血流改善はただの「リラクゼーション」ではありません。
血流改善は痛みを引き起こす化学的刺激や神経過敏、炎症、中枢機能、組織修復など、疼痛にアプローチする科学的に最も強力な介入の一つです。
整体・リハビリ・トレーニング・鍼灸など、どの分野でも応用可能であり、血流改善を中心に据えた評価と施術は痛み改善に大きく関わります。
ぜひ、明日から血流改善を主軸にした介入を意識して取り入れてみましょう。
この記事が身体についての専門職の方々の臨床への一助になれば幸いです。









